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赤頭巾ちゃん気をつけて [小説]

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■今回若干長文です。すいません。

■庄司薫の同名小説並びに、同じシリーズの通称「薫くんシリーズ」四部作(写真には最終作「ぼくの大好きな青髭」がないけど、書いてる時点で新装版文庫をまだ入手できてないから)。東大入試中止時の紛争の話(樺美智子の話はそのひと世代前)なんで、1963年生まれのわたくしはそれを実感はしていない。ただ家族(父親と兄)が読書家(まあ、ダメ人間ともいう)だったので、兄の文庫本を読んで、「なんじゃこりゃあ!」的な印象を受けた(古くてすいませんが同じく70年代のジーパン刑事風)。
何の理由かは分からないのだけど四部作のうち最終作「ぼくの大好きな青髭」は時間を置いてわたくしが高校一年の時に出版された。なんでリアルタイムで氏に触れたのはこの一作だけだ。まあその後氏はエッセイとかは出してるけど小説は出してないし。微妙なタイミングだったかな。

■そんな古い小説をなんで今頃? なんだけど、今年の春に文庫の版元が移行したらしく(中公→新潮)新しい装丁で書店に並んでるのを目撃したが故です。一気に全部買い直しましたよええ。つーか、昔の文庫って版組的にフォントが小さいこともあり、老眼の身にはかなーり辛いわけですよ。

■小説の内容については、最初の作品が40年以上前に出版されていることもあり、わたくしごときが四の五の言える状況ではないんですが、中学生の頃に兄の本棚で「赤頭巾ちゃん」を見つけました。すんごくのめり込んだ。インテリジェンスに溢れてるし適度にエロいし、何よりその口語体が読みやすい! たぶん初めて小説というものに感動した時だったと思う。

■このブログを読んでいただいている奇特な方々の平均年齢は結構いい歳だと思うけど、少数派の若い方々にちょいと説明。1969年は大学紛争の影響で東大の入試が中止されたのですよマジで。SFっぽいでしょ? でも実話なんです。そして主人公の薫くんは裕福な家庭に育ち(お手伝いさん:死語、もいる!)でも「東大入試中止」というのを受けて、他の大学や浪人してという選択肢もなしで、「自分なりに勉強する」という道を選ぶ。まさにSF的。夏目漱石の言葉を借りると「高等遊民」かっつの。

■でもこの小説のオープニングが凄いのだ。これも若い人には分かってもらえないだろうけど、「ぼくは時々、世界中の電話という電話は、みんな母親という女性たちのお膝の上かなんかにのっているのじゃないかと思うことがある」。至言です。まあ携帯普及後以降だけに青春時代を送られてる方々には到底理解不能だろうが、昔は女の子の家電(特に実家の子)を聞き出すのは至難の業だったのですよ。しかも聞き出して電話した後にも、実家の子は必ずしも本人が出るわけじゃないので、親御さんが出たりする。わたくしなんぞ、高校の時の単なる学級連絡で出席番号の後ろの子に電話した時にたまたまお父さんが出て「ウチの娘とどういう関係?(凄む)」と。いや何も高校の同じクラスだけなんですが・・・(実話)。つーくらいに高いハードルだった訳。しかし携帯が普及したら、女の子たちはかなり軽く番号を教えてくれるんだよね(もちろん全員ではない)。しかもそれがなんかの成果につながった例はほぼない(哀

■余計な回り道が多くてアレなんだけど、日本の小説としてはわたくし今までに一番インパクトを受けた小説です。薫くんは性的煩悩に苛まされながら基本的にはすごく真面目な男。大学に行かず自分で勉強することを決めた一因も「みんなを幸せにするにはどうすればいいか?」っていうのが動機。実はわたくしもその言葉に惹かれて大学で社会学を専攻しましたが、卒論面接の時の担当教授の言葉は「オールマイティなロジックはない」でした。まあ今の歳になればそれは分かるんだけどねえ。

■このシリーズに関しては山のように言いたいことがあって困る。うーん、最初に言いたいのはこれは日本メジャー初の「童貞エンタテイメント」だということ。今でこそ「モテキ」その他の「童貞エンタテイメント」はかなりあるけどね。悶々とする童貞とセックスの接点を赤裸々に描写した小説はわたくし的には初めてでした。まあ1969年時点で18歳が童貞、っていうのがダサいかどうかはわたくしには理解できんけど。なんだかんだ言って「非モテ系」のエンタは製作者が気づいているかどうかはともかくとして、間接的には影響を受けてると思う。

■1969年当時の東京都市部の状況が活写されていること。この小説の中での東京のイメージがキラメキ過ぎて、中学生のオレは東大に行こうと思ったくらい。学力全く足りなかったけどね。実際この小説の影響で「日比谷高→東大」を目指した読者が結構いたみたい。この小説の題材の一つである「日比谷高校」は学校群制度(大雑把に言うと、それまでは専願制で、希望する高校に出願する制度だった。学校群は確か、同じ偏差値群をまとめて、適宜該当学校に振ったような)で東大進学率が下がってしまい、それに対しての「赤頭巾ちゃん」の登場人物の発言とか、作者自身(日比谷高校→東大)の不満が反映されてる。

■とは言え、わたくしのこの小説に対する評価は揺るがない。これマジで映画化してほしいなあ。もちろんこの映画、東映で昔映画化されてる。しかも主演:岡田裕介(現東映社長)ですがな!
それはともかく、VFXが発達した現代では、薫くんが体験した69年の東京を再現することは不可能ではないでしょう。ソニービルの「エレクトロ・マジカ'69」とかね。

■でも小説自体の内容にあまり触れてないことに今気づいた。しかも自分がリアルタイムで触れた「ぼくの大好きな青髭」に関しても。ま、このへんはいずれ。

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