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世界から猫が消えたなら [映画]

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■2016/5/14鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年59本目の邦画26本目。

■『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『バクマン。』など、数々のヒット作を生み出した東宝の若き(30代)プロデューサー・川村元気氏の同名小説が原作の映画。川村さんプロデュースの映画には好きな作品が多い。ただし、年初くらいからのTOHOシネマズでのこの映画の予告編ヘビーローテーションには少し辟易していたので、当初は観るつもりはなかったが、まあこれも一ヶ月フリーパスの期間内ということで(言い訳かよ)観ることにした。

■ひどく書きます。ファンの方はご遠慮願えればと。

■30歳の郵便配達員の「僕」(佐藤健)は、自転車で走っている途中に強烈な頭痛を感じ倒れる。診断の結果、手術もできない重度の脳腫瘍で余命いくばくもないと知らされる。途方に暮れる「僕」の許に、「僕」と同じ顔をした悪魔(佐藤健:二役)が現れ、自分が指定するものを世界から消せば余命は一日延びると告げる。最初は「電話」。電話が消える前に「僕」は偶然電話で知り合った昔の彼女(宮崎あおい)に会いに出かける。二つ目は「映画」。親友のツタヤ(濱田岳)に、「人生の最後に見るべき映画は何か」と「僕」は聞く。三つ目は「時計」、そして四つ目は「猫」。

■あらすじだけだとすごく面白そうな映画でしょう。正直オレもそこに騙されたところはある。原作では特定されていないが、舞台は主に函館、と言いつつも微妙に小樽の映像も混ぜている。北海道マニアを舐めてはいかんぜよ。しかも観光映画的でもない素敵な映像。また函館に行きたくなってしまうような。

■「僕」が映画好きで、ツタヤに「人生の最後に見るべき映画は何か」と聞くというところもいいし、「昔の彼女」が、現在は地元の名画座で住み込みで働いているという設定もグッとくる。そりゃ川村元気氏は映画愛に溢れているはずなので当然かもね。

■じゃあ良作と言っていいはずなんだけど、違和感がすごく残る。もともと、今作の監督のCMディレクターの永井聡さんの作品は、前作『ジャッジ!』を観て映画全体の構成力に不安を感じていた。個々のエピソードは面白いんだけどな、というところ。もちろんCMディレクターがどうのではない。(故)市川準監督など、CM出身で秀でた監督はいらっしゃるし。個々のパートは素晴らしいんだけど、全体としてはどうだろう。

■脚本はベテランの名手、かつ好きな脚本家の一人である岡田惠和さんだし、この原因はなんだろうと考え、鑑賞後に原作小説を読んでみたのだが、正直これはひどかった。マジで100万部売れたの?と疑ってしまう。

■一昔前のヒット作『世界の中心で、愛をさけぶ』を想起してしまった。あの話はドラマ→映画→原作小説と、一般的なルートとはオレは逆に推移したのだけど、よくもまあこれだけプアな原作小説を肉付けして立派な映像作品に仕立てあげたものだと、当時感心しました。

■この映画の原作小説はファンタジーに近いんだけど、まず本筋の構成力も文体もひどく、しかも猫が喋ったりとか結構デタラメ(そういうのが有効な小説ももちろんあるけど)。なぜこんな小説を映画化したのか。脚本の岡田惠和さんや監督が、さぞかし苦労されただろうというのは想像がつく。しかも出来の悪い映画なのに、主演陣の佐藤健・宮崎あおい・濱田岳などみんな熱演なんですよ。でも、映画としての全体の構成がまったく不完全。別に映画にメッセージを託す必要はないけれども、劇中の南米のシーンとかって必要なのかと(原作にはあるけどね)。

■いろいろもったいないけど、こういう映画は作るべきではないと思う。企画側のミス。「一番泣ける」というのを売りにする映画はだいたいろくなもんじゃないし、友人が「CMで試写会で泣いてる女性を多用するような映画はまず観ない」と言っていたのもなるほどという感じです。だいたい、ペット好きな人を劇場に呼び込もうというタイトルはひどい。この映画では猫は道具でしかないので。ヒットはしてるようだけど、この映画を「人生の最後に見るべき映画」に選べますか?

■おまけ。『桐島、部活やめるってよ』の原作で有名な直木賞作家の朝井リョウは、大学卒業後東宝に就職したらしく、これは先輩の川村元気Pのように映画プロデュースの道に進むのかと思ったら、昨年東宝を退社し作家専業になられたそうで。

■正解かもね。クリエイティブとプロデュースはたぶん似て非なるもの。川村さんは今後はプロデュースに専念していただきたい。すでに朝井さんは作家活動に専念されてるし。次の朝井さん作品の映画化『何者』楽しみにしてます。

■まあ確かに、人生最後の日は映画館で好きな映画を観ながら終えたい、とは思うのだけど。

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