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葛城事件 [映画]

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■2016/6/21鑑賞@109シネマズ川崎。今年76本目の邦画35本目。

■劇作家・俳優の赤堀雅秋さんの、『その夜の侍』に続く監督第2作目。基本的には劇作家の方だが、俳優としても『鈴木先生』『岸辺の旅』などで見かける。この映画は同名戯曲の映画化。残念ながら赤堀さんの舞台は未見。まあ、舞台は年に観て2〜3本というレベルですので。

■しかしこの映画、もともとの舞台が数年前の「秋葉原無差別殺人事件」などの題材をテーマにしたまたシリアルキラーものなので、ちょっと最近この手の映画が続いているのでうんざりはしていた。ただ、あくまで参考にした、というレベルの話なので実話ベースではありません。今のところ舞台嫌いで「最初で最後の舞台」と公言している新井浩文が、舞台での次男役から長男役にシフトして臨んだというところで興味を惹かれたというところもあるし、ぶっちゃけ言えば、新井浩文がホストのBS旅番組『美しき酒呑みたち』で、主演の三浦友和と監督の赤堀雅秋が番宣で出ていて面白そうだったので。

■郊外で親から継いだ金物屋をやっている葛城清(三浦友和)。マイホームを建て、妻・伸子(南果歩)と長男・保(新井浩文)と次男・稔(若葉竜也)の四人家族。しかし頑迷な清の性格が家族にきしみを生じさせていく。保は従順だが気弱な性格で、親や妻にリストラされたことを言い出せないでいる。稔はバイトすらろくに務まらず、日々清に罵倒されている。そして伸子の精神も歪んできたところ、稔は無差別連続殺人という凶行に走ることになる。

■程度問題はともかく、オレの一世代上には、清のように自説を曲げない頑迷なおじさんは結構いるように思う。まあそのへん、自戒を込めてだけど。『クリーピー 偽りの隣人』が同様の犯罪を扱っていながら描写はドライなのと違い、この映画の演出は、極論すればある種の呪詛に満ちていてとても恐ろしい。

■理解や共感を超えたところにある映画なのだけど、死刑囚となった稔と獄中結婚をする順子(田中麗奈)の行動がオレには一番理解に苦しんだ。もちろん死刑廃止を訴える人たちには、実際に死刑囚と結婚した例もあるのは知っている。その辺も含めて違和感だらけの映画なんだけど、なぜかとても面白い。

■舞台版では凶行に走る次男から、映画では気弱な長男にスイッチした新井浩文の演技は素晴らしい。今や邦画で見ない作品はないくらいの新井くんですが、誰とは言いませんが同様にたくさん出ている他の若手俳優と違い、演技の引き出しがものすごく多いのはさすがです。そろそろ日本アカデミー助演俳優賞なんていかがでしょうか。

■しかし、この映画に関して一番すごいのは、主演の三浦友和です。彼が演じる清は、徹頭徹尾自分が悪いとはまったく思ってないのが分かるほどふてぶてしい。ある意味衝撃のエンディングもそれを明示している。衝撃というより「すごすぎ」と呆れたけど。直前に観た『ロクヨン』の正義感あふれる刑事とは真逆で、やはり役者さんは凄いなと。

■また終映間際で申し訳ないのですが、かなりお薦めです。ただしくれぐれも、メンタルの状態がいい時に心の準備をした上でご覧ください。


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