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ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ [映画]

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■2016/10/16鑑賞@TOHOシネマズシャンテ。今年108本目の洋画56本目。トマス・ウルフ、フィッツジェラルド、ヘミングウェイなど、1900年代のベストセラー作家を生み出した敏腕編集者、マックス・パーキンズのノンフィクションを元にして作られた映画。この映画の情報を知って以来、絶対観たいと思っていたのだけど、この手の文芸映画は恐ろしく上映館が少ないので、またもやTOHOシネマズシャンテまで赴くことになった。

■フィッツジェラルドやヘミングウェイの発掘で名を成していた編集者パーキンズ(コリン・ファース)の元に、あちこちで持ち込みを断られた作家志望のトマス・ウルフ(ジュード・ロウ)の小説が持ち込まれる。いささか長過ぎるその小説にパーキンズは才能を見出し、ウルフとともに長い打ち合わせの後に大幅にシェイプされた小説は『天使よ故郷を見よ』と名付けられ大ヒットする。その勢いで二人は第二作に取り掛かるが、パーキンズは家庭を、ウルフは愛人アリーン(ニコール・キッドマン)を疎かにしてそれぞれ反感を生む。結果第二作『時と川を』もヒットするが、ウルフはパーキンズ頼みという悪評に怒り、またパーキンズは自分の選択が正しかったのかを自問自答し、二人の関係に微妙なものが生まれる。

■原作のノンフィクションは未読なのだけど、脚本の構成が絶妙でテンポがいい。個人的な好みだがこの時代(1920ー30年代)のアメリカ文学にはすごく興味があり、耽読に近いほど読んでいたフィッツジェラルドや、ヘミングウェイが登場人物として現れるのも非常に楽しかった。

■けど実は、トマス・ウルフの作品は全く読んだことがない。ヘミングウェイは日本のどの年代でも一定の読者層がいたし、オレも数作は読んだことがある。フィッツジェラルドは作品の映画化や、1980年代以降の村上春樹の新訳などでリバイバル的に人気が高まり、現在でも一定の人気がある。トマス・ウルフは、すごく失礼な言い方をすれば日本ではあまり流行ってなかったのだ。調べてみたら日本では再評価のきっかけにもなる新訳もされてないようだし、現在著作のほとんどは絶版状態。特にフィッツジェラルドは、村上春樹や野崎孝(故人)の翻訳で認知されたところも大きいしもったいない。もう原書を辞書を引き引き読む気力もあまりないので、これを機会に新訳が出ないかな、とも思うが難しいか。なお、字幕協力で英文学者の柴田元幸さん(オザケンの恩師)がクレジットされているが、これはおそらくトマス・ウルフの小説の翻訳文のところで協力したのではないかな、と邪推してみたりする。

■コリン・ファースとジュード・ロウの素晴らしい演技もあり、かなりお薦めの映画です。ただ、パーキンズが手掛けた小説家の中で、この映画に出てくる3人は幸せな死に方をしていない。フィッツとウルフは若くして病死、ヘミングウェイは自殺と。それはパーキンズが理由なのか、それともこの時代のアメリカの作家が運命的にそうだったのか、はオレには分からないけどね。

■ちなみに原題は『Genius』。なんでこんな邦題になるのかなという文句は、毎度のことなので止めておきます。

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