奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール [映画]
■2017/9/16鑑賞@109シネマズ川崎。今年78本目の邦画29本目。
■大根仁監督の作品は、映画は公開作をすべて観ているし、ドラマもおおむねチェックしているので、まあファンと言っていいだろう。という訳で今作も前のめり気味で観ることになる。渋谷直角の同名漫画が原作というところは、『モテキ』『バクマン。』と同じだが、渋谷直角の原作漫画はこれらとは売上の桁がかなり違う。まあ、知る人ぞ知るっていう漫画なのだけど、映画が面白ければ別に問題ない。
■社内異動で、オシャレなライフスタイル雑誌に配属になったコーロキ(妻夫木聡)は、奥田民生を理想とする男。酸いも甘いも噛み分けたような木下編集長(松尾スズキ)の元、シャレオツな雰囲気に馴染もうと努力するが、そんな時取引先のアパレル会社のプレス・あかり(水原希子)と出会い一目惚れ。ちょっとしたやり取りの後、何とかあかりと付き合えることになったコーロキだが、そこからコーロキには地獄が待っていた。
■基本ラブコメなんで、以降のあらすじを追ってもあまり意味がないが、要はビッチ女に振り回される純情男という、大根監督お得意のパターン。冒頭からコーロキの過剰なモノローグで話が進んでいくところは『モテキ』の幸世を彷彿させるし。テンポが良く楽しいし、あかりに袖にされるあまり、コーロキが執拗に電話やメールしてストーカー寸前まで行ってしまうところとか、夢中になり過ぎた男がやりそうな事で心が少し痛い。
■シリアスからコメディまで何でもやれる器用な妻夫木くんだけど、これは彼の当たり役のひとつだろう。そして大根組には毎度おなじみの新井浩文とリリー・フランキー、大根組には初登場の松尾スズキなど、味わい深い。ただリリーさんと松尾スズキはオレと同世代で、劇中でもそういう役なのだが、こじらせて年取った感じがまたもや心が痛い。安藤サクラと江口のりこは、顔がよく似ているので途中でちょっと混乱した。大根監督が面白がってわざとやってる訳じゃないよね?
■ハイスピードカメラを使ってスローのシーンを劇中に挟むのは大根監督の悪癖で(とオレは思う)、それで正直テンポが削がれるところはあるけれど、時間も100分弱と短いし(『ダンケルク』もそう書いたけどあくまで一般論ね)十分な娯楽作になっていると思う。
■ただヒロインの水原希子。オレはどうもこの女優さんが苦手なのだ。なのでコーロキが狂わされるというところにあまり感情移入ができない。例えば『モテキ』では、長澤まさみがあんなことやこんなことをしてくれるので(実はそんなに大したことじゃないけど)観客の男は頭がおかしくなったりした訳だ。なのでもしヒロインが石原さとみとかだったら、オレもこの映画を観て頭がおかしくなったに違いない。まあでも石原さとみだったら、あそこまでエロくはできなかったか。という話を知人女子にしたら、「えー希子ちゃんカワイイじゃないですかー」と不満たらたらでした。なので水原希子ファンの方なら、この映画を観て頭がおかしくなれるかも知れません。ただ、知ってる範囲で、水原希子のファンの男っていないんだよな。
■あと、ドラマはそんなことはないのだが、大根監督の映画は、インディーズの『恋の渦』を除いて、舞台がすべて「業界」というのが少し気になる。『モテキ』はネットメディア、『バクマン。』は漫画出版社、『SCOOP!』は写真週刊誌、とかね。テーマも内容も全部違っているんだけど、我々の若かった頃と同じく、主要な観客層である今の若者はそんなに「業界」に興味があるのかな、という疑問。次回作はまったく別の世界を舞台にして欲しいな、とも。
■グダグダ書きましたが、映画自体はお薦めです。よろしければ。
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