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今夜、ロマンス劇場で [映画]

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■2018/2/10鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年9本目の邦画5本目。

■あらかじめ書いとくと、ベタベタな恋愛映画です。でも日本映画の最盛期に観客として接することが出来なかったオレたち1960年代生まれとしては愛おしい映画。

■もうすでに映画が斜陽産業と化していた1960年代後半。映画会社の助監督・健司(坂口健太郎)は、日頃の鬱憤を晴らすために撮影所近くの名画座「ロマンス座」にしょっちゅう通っていた。健司が好きなのは、昔上映されたモノクロ映画の主人公のお姫様・美雪(綾瀬はるか)。しかしそのフィルムが売却されることになり、ロマンス座での上映が叶わなくなる最終上映の日、美雪が画面からモノクロームのまま、健司の前に実体として出現したのだった。

■以下はストーリーは書きません。綾瀬はるかを思い切りオードリー・ヘップバーンに擬した演出も冴えてる。坂口健太郎の純情助監督もいい。昔あった素敵な夢をずっと観させてくれるような。

■オリジナル脚本と聞きすげえな、と思ったけど、ちょっと脚本のツメが甘すぎる。美雪はメイクするだけでフルカラーになったの?とか、健司の下宿に居候している美雪の衣装(衣装部から借りっぱなし?)と生活費は薄給(たぶんね)はどうしてたのか、とかね。

■オチはこの手の映画としては以外なんだけど、まあ明かすまい。健司の晩年を演じた加藤剛さん、素晴らしかったです。

■とても素敵な映画でした。実際ヒットもしてるし。でもね、脚本の整合性はもっと練ってもらいたかった。折角のロードショーなんだから。

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デトロイト [映画]

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■2018/2/04鑑賞。今年8本目の洋画4本目@TOHOシネマズ川崎。

■この映画、前日に観た『スリー・ビルボード』同様、アメリカでの人種差別(黒人差別)が主要なテーマのひとつ。ただ『スリー』はフィクションなのに、こちらは1967年にデトロイトで起こった暴動を扱ったノンフィクションだし時代も違う。デトロイトという街は(行ったことないですが)かつては自動車産業で名を成した街。そこから超有名な『Motown』レーベルが生まれたという話です。当時は労働集約型産業(今もそうかな)であった自動車産業に、労働者としての黒人の住民比率が高かったそうで。

■監督のキャスリン・ビグローは『ハート・ロッカー』でアカデミー賞監督賞・作品賞など数々の賞を受賞。そして主演のジョン・ボイエガも『スター・ウォーズ フォースの覚醒』以降ブレイクした3人の新キャスト(アダム・ドライバー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ)のひとりということもあり、当然本作もアカデミー賞ノミネート発表までは、日本では「アカデミー賞最有力!」という惹句で宣伝されていた。だが結果はノミネートもされてなかった始末。なぜそうなったかの個人的感想は後に書く。

■1967年のデトロイト。直近に暴動が発生して不穏な空気の中、とあるモーテルで空気銃を酔った若者が悪戯で撃ったことから、通報を受けた大勢の警官と州兵が殺到した。警官や州兵の尋問から、白人による黒人への殺戮ゲームへと展開していく。近所の食料品店の警備員メルヴィン(ジョン・ボイエガ)は図らずも騒動に巻き込まれる。

■実話といっても、オレも含める大部分の観客はディテールを知らないはずなので、スリリングな成り行きにドキドキする。敢えてそういう描き方にしているんだろうが、黒人というだけで罪を問う人種差別警官フィリップ(ウィル・ポーター)のクソぶりには本当に拍手したい。メチャメチャ褒めてます。

■白人が支配しているモーテルの中からの脱出劇もテーマのひとつなんだけど、本当にスリリングだった。面白かった。

■なぜこの映画がアカデミー賞の賞の評価に登らなかったというのは、史実だから仕方ないけど、人種差別警官が結果として大した罪に問われなかったこと。そりゃ事実は改変できませんわな。そして主演のジョン・ボイエガが、ずっと第三者的に傍観していたことだ。もちろん彼は実際には警察の拘束を受けていた訳だけど。

■アメリカという国がいいか悪いかって簡単に片づけられるものではないけど、少なくともハリウッドはこういう映画を作り続けている。邦画も頑張って欲しいんです。マジで。

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スリー・ビルボード [映画]

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■2018/2/4鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年8本目の洋画4本目。

■珍しいことに友人夫妻と一緒に鑑賞。もちろん若い頃はデートの道具として映画を使っていた頃もあったし、それを懐かしく思う。先月閉館したTOHOシネマズ日劇とか、90年代半ばは座席予約のシステムが当時はなくて、人気映画で待ち合わせしようと思ったら、上映時間の1時間半くらい前からマリオンの非常階段の長蛇の列に並んだものだ。まあ、デートの道具としては非効率だし、数多く映画を観るようになってからは、スケジュールの調整が自由である単独鑑賞(当たり前だ)が中心になった。それなりに年を取り、映画よりもっと効率のいいデートの道具を見つけたというのもあるけど。まあ、全然モテませんがね(涙)。

■その日は映画の後に、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』の感想を話そうという友人夫妻の旦那さんの企画があったので。映画鑑賞後に別の友人女性も合流し、川崎のベトナム料理屋で旧交を温めた。20年ぶりの再会もあったし、年を取るのはそれはそれで楽しいな、ともね。

■閑話休題。今頃書いてて何だというそしりは甘んじて受けるが、この作品は今年のアカデミー作品賞で、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』と、作品賞候補の二大有力候補と目されていた。結果は皆様ご存知の通り『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を受賞。でも、主演のフランシス・マクドーマンドは主演女優賞を受賞し、人種差別主義者の警官役のサム・ロックウェルも同じく助演男優賞を受賞した。そうくるとマーティン・マクドナー監督がノミネートもされてないのが不自然だけど、この人の監督作は初見なので何とも言えない。

■前置きが長すぎて大変申し訳ございません。ミズーリ州の田舎町。7ヶ月前に娘アンジェラ(キャスリン・ニュートン)を強姦殺人で喪ったミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、一向に進展しない捜査に腹を立て、郊外の道路に3つの看板の意見広告を出す。娘の被害と捜査の進捗の遅れ、そして地元の警察署長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)の責任を責める看板だった。

■ミルドレッドは事件の直前に、車を使う・使わないでアンジェラと口論になったままということを悔いており、そこに固執するあまり夫のチャーリーと離婚し、チャーリーは若い女と同棲している。一方、署長でありながら末期癌のウィロビーは困惑する。表向きにはミルドレッドの要求を拒絶するが、最後は自殺する前にミルドレッドを助けるようなメッセージを残す。だが、ウィロビーの部下の超人種差別主義者のディクソン巡査(サム・ロックウェル)が暴発し、それに対してミルドレッドも暴発する。

■結末はもちろん書きませんが、先がまったく読めないスリリングで面白い映画でした。エンディングはちょっとアカデミー賞受けを狙ったところがあったかなという感想はあるけども。この翌日に観た『デトロイト』も似た題材なんだけど、人類にとっての宿痾は「人種差別」なんですよ。アメリカだけでなく日本でも他人事ではないのはお分かりでしょう。それを止めるべきなのは政府であり法律、そして制作側でもあるんだけどな。

■なんで、ハリウッドの一部には良心が残っている、と思う次第でございます。あ、映画はすごくいいです。お薦め。

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羊の木 [映画]

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■一ヶ月ぶりのエントリ。2018/2/03鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年7本目の邦画4本目。間が空いたのは痛風になって右足が痛かったりとか(不摂生以外の何物でもない)、たびたび帰省してたとかまあ色々理由があるのだけど、人生最大の病である「めんどくさい病」のせいということにしておこう。ともかく遅筆で申し訳ございません。現時点での上映館はほぼゼロなので、パッケージを待っていただくしかないかと。

■吉田大八監督の商業デビュー作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』をU先輩に薦められて以来、吉田監督の映画は、タイミングが合わなかった『クヒオ大佐』を除き(その後配信で見た)、ほぼ劇場で観ている。『桐島、部活やめるってよ』が低調なスタートからクチコミで興収が増えていき、結果日本アカデミー賞の最優秀作品賞&最優秀監督賞その他を受賞したのを知っている人は多いだろう。主演の神木隆之介はすでに知名度はあったものの、橋本愛、東出昌大、松岡茉優、山本美月、太賀など若手スターを輩出した映画でもある。

■『腑抜けども』『桐島』など、吉田監督の映画は地方を舞台にしたものが大部分で、地方出身者のオレとしてはそこも好きなところなのだが、今作も魚深市という架空の地方都市(モデルは富山県魚津市)が舞台。原作漫画は、作:山上たつひこ&画:いがらしみきおという、1970〜80年代を席巻したギャグ漫画の大御所。山上さんは近年は漫画より小説や原作にシフトされているらしい。好きな漫画家さん二人なのに未読。いずれ読みます。

■魚深市役所の職員・月末(錦戸亮)は上司からの命令で、他からの移住希望者の迎えと住居・職業のアテンドをすることになる。やって来たのは宮腰(松田龍平)、杉山(北村一輝)、理江子(優香)、大野(田中泯)、清美(市川実日子)、福元(水澤紳吾)の6人。「魚が美味しい。人がいい」と平板な言葉しか並べられない月末。実はこの6人は全員元死刑囚で、一定期間在住すれば仮釈放を早めるという政府の極秘プロジェクトに、人口減で苦しんでいた魚深市が乗ったという話だった。

■現実的にはありえない漫画の話ですが、オレみたいに、実家が人口十数万の地方都市の出身者にはリアリティがすごくある。映像描写の中にも、魚津市が将来性あふれる町という描写はまったくなく、生活に疲れ切った人ばかり。オレの場合、地元に残って頑張っている友人たちは素晴らしいとは思うんだけど、そう見えてしまうのは現実。

■大部分の元死刑囚は人生をやり直そうと努力している。月末は、以前思いを寄せていた昔の同級生で帰郷した文(木村文乃)と、地元在住の同級生・須藤(松尾諭)と、時折バンド活動の真似事をしているのだが、そこに宮腰が参加したいと言ってくる。受け入れた月末たち。その後宮腰と文は交際するようになるが、周辺で殺人事件が起きる。実は宮腰はサイコパスだった。

■半ばネタバレで大変申し訳ございません。しかし、とても面白い映画で、近年の吉田監督の作品では一番の出来だと思います。最後までネタバレさせないミステリと(なのにネタバレしてしまってすいません)地方都市の圧倒的な閉塞感を見事に表現している。

■役者としては松田龍平の人を食ったサイコパスの怪演と、3人の女優陣がそれぞれの色を出していてとてもいい。主演の錦戸はなんか狂言回し的な役だったんだけど、伝え聞いたところによると吉田監督は絶賛だそうで。

■現時点では、ほぼレンタルを待つしかなくて申し訳ございません。でもお薦め。今年のオレ的邦画ベストテンには入ると思います。

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