焼肉ドラゴン [映画]
■2018/6/24鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年55本目の邦画25本目。
■鄭義信による同名戯曲を映画化した作品。鄭義信さんはあまり印象になかった方なのだが、年初に石原さとみ主演の舞台『密やかな結晶』を観て面白かったので。演出家の名前をチェックしたら鄭義信だったので興味が湧いた。その後調べたらまあまあ昔の映画『月はどっちに出ている』(岸谷五朗&ルビー・モレノ)の脚本家のひとりでもあったということで。ま、真木よう子、大泉洋、井上真央が好きな俳優さんということもあるけど。
■1970年の伊丹あたり。在日韓国人の龍吉(キム・サンホ)と妻の英順(イ・ジョンウン)は夫婦で小さな焼肉屋をやっている。長女・静花(真木よう子)、次女・梨花(井上真央)、三女・美花(桜庭ななみ)の他に末っ子の時生(大江晋平)の6人家族。梨花の婚約者である、同じく在日韓国人の哲男(大泉洋)は心に思うところがあるようで。
■戦後のドサクサの中、龍吉は確かにこの土地の権利を購入したはずだったが、市役所側はそうはみなさず不法占拠とし、伊丹空港拡張のために立ち退きを迫られている。時生は将来のために、と名門の私立の高校に入れられたが、そこで韓国人であることを理由に陰湿ないじめに遭っている。
■ネタバレをすると、結局家族は離散するのだが、ある者は韓国に行ったり、またある者は北朝鮮に行ったりと(その当時は帰朝活動があったらしい)なかなかシビアな結末。観ていて楽しい映画ではなかったが、観るべき映画のひとつだと思う。ただ、舞台の映画化として、(この作品だけではないけど)スケール感に乏しく、「これ劇場で観る必然性ある?」とは思ったけどね。
■この映画も『万引き家族』同様、文化庁助成金を受けているんだけど、一部のおかしな方々がまた「在日韓国人の映画に助成金を出すのは何事だ!」といちゃもんをつけたわけですよ。オレの出身の愛媛県も含め、主に西日本ではだいたい、在日韓国人/朝鮮人が主に住んでいる集落がほぼあって、差別とかいがみ合いもありながら共存してきた訳です。東日本では西日本よりは多くないので、そう主張される方々は共存してきた経験がないのかな、と。
■まあ、長年に渡って、(アイヌ人と沖縄人は別にして)単民族国家であった日本が招いた島国根性のせいとは思いますけどね。でもちょっと考えれば、日本人というのは「日本で生まれた純血民族」でも何でもないことは容易に想像できると思うんですけどねえ。
■余計なことを書きすぎました。申し訳ございません。
空飛ぶタイヤ [映画]
■2018/6/21鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年54本目の邦画24本目。
■皆様ご存知の通り、池井戸潤の小説はその性格上(勧善懲悪)、ものすごく映像化されており、代表作は超ヒットしたドラマ『半沢直樹』な訳ですが、初映画化というのは存じ上げませんでした。ちなみに、この『空飛ぶタイヤ』は以前WOWOWで三上博史主演でドラマ化されてまして、オレもそれは見てました。面白かったです。しかし今回映画を観たところ、あまり内容を覚えてなかった(笑)。原作小説読んでないしね。加齢に感謝します(涙)。
■中小の運送会社の赤松運送の社長・赤松徳郎(長瀬智也)は、ある日自社が運行していたトラックのタイヤが外れ、たまたま近隣を歩いていた柚木妙子(谷村美月)を直撃し妙子は亡くなってしまう。警察は捜査に動くが、結論はトラックを製造したホープ自動車ではなく、赤松運送の整備不良ということになり、会社は存亡の危機に立たされる。納得の行かない赤松は、同じトラックで同様の事故がないか執拗に調べ始める。彼の熱意に、敵でホープ自動車のカスタマー課の課長・沢田(ディーン・フジオカ)や記者の榎本(高橋一生)も動かされ、巨大企業に潜む闇を追及するのに同調していく。
■いつもの池井戸節ですが、面白かったし実際にヒットもしました。WOWOW版の三上博史(オレと同じくらい背が低い)の中小企業社長感がピッタリだったのと比べ、現役アイドルでイケメンでオラオラ感がある長瀬智也がそんな役やれるのかなという危惧はあったんだけど、いつものバカハンサムを封印してきちんと出来てました。そしてオレ的には大根だと思っていたおディーン様の演技が結構良かった。高橋一生はこの映画では箸休め程度だったけどね。
■面白かったので機会があれば是非、レンタルか配信で。池井戸作品の映画化、これから増えそう。
レディ・バード [映画]
■2018/6/10鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年53本目の洋画30本目。
■超有名な俳優陣が出てる訳でもないし、グレタ・ガーヴィグ監督の作品も未見だったので(初監督作なんで当たり前です)、この作品がアカデミー賞の各賞にノミネートされていたのが不思議だった。だけど映画を観て疑問は氷解した。とても親しみやすい映画だったのだ。
■サクラメントに住む女子高生のクリスティン(シアーシャ・ローナン)はムダに自意識が高く、自らを「レディ・バード」と名乗る。田舎(つってもサクラメントなんでまあまあ大都市)にいる自分が耐え難く、東海岸の都会の大学に進学したいと思っているが、父親が失業中ということもあり、母親は地元の大学への進学を望んでいる。
■それに抗いながら、高校生活を送るレディ・バードだが、最初にできた彼氏はゲイだったり、二番目の初体験の彼氏はヤリ○ンだったり、親友とは離反したりして散々な生活を送るという経過。
■自分の過去と比較して申し訳ないけど、田舎(サクラメントと比較にならないくらい四国の田舎)の高校生だったオレは、自意識は高いが頭が悪い若者の実例として「オレはこんなところで暮らす男じゃない」という思い込みがあったので、すごく共感するのだ。で大学はどこに行ったかというと地方都市の仙台。バカ過ぎますね。
■でも、とても暖かい映画だった。各映画賞にノミネート・受賞したのも納得がいく。そしてレディ・バードが物語の中で少しずつ成長していくところも感動。現在の日本のJK映画は恋愛至上主義で、おそらくこんな映画は作れないと思う。
■とてもとてもお薦めです。が、遅筆ゆえ現在の上映館はほぼありません。11月にディスクの販売&レンタルが始まるようなので、是非そちらで。
■そもそも映画館で観てほしい映画を告知するのが目的のひとつのブログなのに、何やってるんですかねえ。書く密度を上げたいと思ってます。
羊と鋼の森 [映画]
■2018/6/9鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年52本目の邦画23本目。
■9月に入って6月の感想って馬鹿か?と思われますよね。大変ご無沙汰しております。それほどの期待値もないというのは覚悟の上ですが、特に9月に入って私事(楽しくないほう)でバタバタしていたというのは言い訳です。
■北海道の過疎地域で育った高校生の外村(山崎賢人)は、教師に体育館に来る調律師・板鳥(三浦友和)のアテンドを頼まれる。そこで調律の世界の奥深さを知り、将来何の目標もなかった外村は東京の専門学校に行き、卒業後板鳥の所属する楽器店に就職する。そこで出会った先輩・柳(鈴木亮平)や、顧客のピアニストを目指す姉妹(上白石萌音・上白石萌歌:本当の姉妹)と触れ合いながら成長する話。
■かなり良かったし、上白石姉妹の連弾なんて結構な眼福。ただ原作の宮下奈都さんの小説は本屋大賞を獲ったくらいなので、エピソードのボリュームが若干足らなかった気がして、初見の時にFBで書いた。そしたら映画業界にいる先輩たちから、「あんなペナペナな原作でよくここまで出来たよね」的な反応を頂いた。その時は原作を読んでなかったのでそんなもんかなとは思った。
■鑑賞後いろいろあって一ヶ月後に原作小説を読んだ。面白かった。とても豊穣な小説だ。ただ映画にするにはストーリーの展開にダイナミズムはないかなとは思った。でもね、原作は小説の形を借りた豊穣な詩なんですよ。映画化するならメジャーではなくて、別のプロトコルでマイナーで公開するのが幸せだったのかなとも思う。
■まあでも予算規模を考えるとそれも無理か。面白い映画なので、是非レンタルか配信で。