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オーバー・フェンス [映画]

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■2016/9/17鑑賞@TOHOシネマズららぽーと横浜。今年99本目の邦画48本目。

■自死を選んだ孤高の小説家・佐藤泰志の小説が原作の、『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く「函館三部作」最終作。原作者が同じということ以外にも共通点があり、プロデューサー、脚本(高田亮)は同じ。監督は作品ごとに異なるが、『海炭市叙景』の熊切和嘉監督、『そこのみにて光輝く』の呉美保監督、そして今作の山下敦弘監督と、全作通じての撮影監督の近藤龍人さんは、みんな大阪芸術大学の卒業生である。『シン・ゴジラ』の庵野秀明総監督もそうなので、「大阪芸大日本映画征服計画」の一環と言われている。ウソです。

■『そこのみにて光輝く』を最初に観て凄いと思ったので、その後『海炭市叙景』をTSUTAYAで借りて見たがこれもまた凄かった。なので今作の公開もまた楽しみにしていた。

■以下毎度のことですが、本編に関係ないヨタ話です。初めて訪問した時から函館という街を好きになったオレは、それから数回訪れている。昨年の初夏に再訪した時に、ふと、四半世紀前の年末年始に会社の先輩後輩と旅行した時に訪れた「杉の子」というバーに行こうと思い立った。雰囲気が良くて酒が安かったので(トリスが100円台)。

■ネットで検索したところ、店は移転して再開しているらしい。恐る恐る行ってみたが、店主はオレより少し上くらいの女性だった。先代の店主が亡くなった後この店を引き継いでいるらしい。当時の(オレの)思い出話や、函館にも蔦屋書店が出来たらしいなどとどうでもいい話をしていたが、そこで店内に置いてあった『オーバー・フェンス』の制作協賛依頼のチラシが目に入った。

■話を聞いてみると、店主も映画好きで、函館でロケされる映画の制作を手伝うなどしているそうで、オレが『そこのみにて光輝く』はすごくいい映画だという話をしたら喜んでくれた。それで必ずこの映画を観ようと1年以上前から思っていたわけです。

■前述の通り、佐藤泰志の同名短編小説が原作。職を失い妻子と別れ、失意のまま故郷・函館に戻ってきた白岩(オダギリジョー)は、職業訓練校の木工科に通いながら失業保険で暮らしていた。授業が終わると弁当と350mmの缶ビールを二缶買って帰るだけの単調な日々。義弟からの家族の食事会の誘いもはぐらかして逃げていた。

■職業訓練校に通う仲間たちも、失業保険の延長のため来ている者、整備科からあぶれた者、年金で暮らしているのに趣味で木工を学ぼうとする老人、行くあてもなく来ている大学中退の男など様々。その中の一人、代島(松田翔太)に誘われキャバクラに行った白岩は、野鳥の真似をする変わった女・聡(蒼井優)と出会うが、彼女は以前白岩が弁当屋の前で見かけた女だった。以前メンタルを壊したことがあるような聡に、白岩は興味を持ちだんだん惹かれてゆく。

■オダギリジョーはもはや屈折した男が当たり役で、公明正大な正義のヒーローなんてもう出来ないだろう。昔は仮面ライダーだったのにね。蒼井優は昨年のドラマ『Dr.倫太郎』に続いてメンヘラの人の役だけど、本人がそうかは別にして非常にハマっている。小賢しい松田翔太、そして思い詰めたような大学中退の男を演じる満島真之介の演技は鬼気迫っている。

■ただ、複数の連作短編が原作の『海炭市叙景』や、長編小説が原作の『そこのみにて光輝く』と比べると、元のシノプシスの量が少なすぎて若干間延びした印象を受けたのも正直なところ。三部作の中では佳品の位置付けかな。

■三部作共通に企画を担当した菅原正博さんという方は、函館で「シネマアイリス」という映画館を経営している人。もともとは函館出身の作家・佐藤泰志の小説を広く知らしめたいということで企画したらしい。そういう意味ではご当地映画のはずなんだけど、撮影監督の近藤龍人さんの撮る画は、観光映画のような画像は丁寧に避けて、美しくかつ退廃的な色を持つ函館を優しくかつ残酷に捉えている。それでもいいから函館に来て欲しい、という、おためごかしではない強い意志を感じる。

■近藤龍人さんって、今の邦画の撮影監督ではトップの一人かと。気になった人は「近藤龍人」でググってみてください。どれだけすごい作品を撮っているかが分かります。

■この映画での映像も、オレが昨年行ったときも、まだ函館(新函館北斗)まで北海道新幹線が開通する前の話。開通後どう変わったか、というのを確かめてみたくもある。

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