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2017年、面白かった映画 [映画]

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■2017年に観た映画は112本。複数回観たのも含めると計120本で、2016年の累計160本と比較すると25%減。でありながら全作の感想と総括を2016年中にアップしていたのと異なり、現在これを書いているのは2018/01/30と、1月終わるまであと1日。2018年はなるべくそうならないようにしたいが、現時点でもう1ヶ月の遅れ。自分が思うほど期待はされていないのは重々承知の上だが、意地もあるので(何の)なるべく頑張ります。

■2016年は邦画が豊作だったのと比較し、2017年は洋画が豊作だったと思う。なので洋画は10本にして、邦画は5本にした。そもそも昨年は邦画は40本ちょいしか観てないので、その中で10本はおこがましい。個々の内容はリンク参照。

■では洋画から。
『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』
『ラ・ラ・ランド』
『T2 トレインスポッティング』
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『ベイビー・ドライバー』
『パターソン』
『ダンケルク』
『ドリーム』
『ブレードランナー 2049』
『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』

■『ブレードランナー』『スター・ウォーズ』、そして『トレインスポッティング』の続編は外せませんでした。あと『カフェ・ソサエティ』『沈黙ーサイレンスー』『ワンダーウーマン』とか、あと数本は入れたかったなあ。オレ的には洋画が豊作でした。

■そして邦画。
『愚行録』
・『3月のライオン 前篇後編
『三度目の殺人』
『彼女がその名を知らない鳥たち』
『花筐 HANAGATAMI』

■邦画は全般的にトーンの暗めな作品になってしまったが、致し方ない。『銀魂』『ジョジョの奇妙な冒険』とかの笑える作品も多かったんだけどね。でも邦画の一推しは大晦日に観た『花筐』かな。

■そしてこれは洋画邦画問わずなんだけど、2017年に心を動かされた映画は、その大部分が作り手の熱量を感じさせるものだった。ここで選んだ作品も、選んでない作品も含めて。これは「雑な作りだけど熱量を感じられるからいい」という話では決してない。作り手の熱量を感じさせるには、技術の裏打ちが必要不可欠。凄く当たり前の事を言ってるけど。ただ『スター・ウォーズ』シリーズのように、予算とそれがもたらす経済効果が膨大だと、そこまで感じさせるのは難しい、というところは正直あるけどね。

■今年もなるべく頑張りますので、懲りずにお付き合い頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。

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花筐 [映画]

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■2017/12/31鑑賞@TOHOシネマズららぽーと横浜。今年112本目の邦画41本目。これが2017年の映画の見納め。

■誤解を恐れずに書くと、この数年で観た映画で一番心を揺さぶられた。映画の出来がではなくて、首根っこを捕まれ揺さぶられて脳幹に酸素が届かない、といった風な。巨匠・大林宣彦監督の「戦争三部作」(と言われている)の最終作、らしい。

■原作は檀一雄の同名小説。未読。かなり初期の作品だったらしい。檀一雄でピンとこない人は「女優:檀ふみの父親」と脳内置換して以降読んでください。檀ふみの出生時は檀一雄は43歳だったようなので、当時としては高齢出産なんだろうか(お父さんが産んだわけじゃないが)。

■1941年(昭和16年)、外交武官の息子として生まれた武彦(窪塚俊介)は、両親の赴任先のアムステルダムから大学予備校に入学するために帰国し、叔母・圭子(常盤貴子)の元に身を寄せる。そこで出会った同級生たちは、アポロ神のような肉体を誇る鵜飼(満島真之介))、虚無的だが思索が深い吉良(長塚圭史)、相手に調子を合わせる阿蘇(柄本時生)たちだった。

■彼らとの交流の中、従妹で肺病を患っている美那(矢作穂香)や、その同級生のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)との交流でいびつながらも青春を謳歌する。だが、彼らの前に太平洋戦争の開戦が忍び寄っていた。

■ネタバレはあまりしないつもりで続けるが、何が凄いって、当時の大学予備校の入学年齢は17歳。しかし主演の窪塚俊介は37歳、長塚圭史はなんと42歳。満島真之介は28歳、同じく柄本時生ですら28歳と、役者の年齢をガン無視したキャスティング。女優陣はそうでもないけど。それでも違和感をまったく感じさせない強引な演出は凄いな、と思った。

■演出は映像に関しても強引です。舞台が佐賀県唐津市なんだけど、どうも檀一雄の原作では特定はされてないらしいが、唐津市で全面ロケを行ったそうで。それはいいのだけど、ほぼ素の映像がなくて、大部分はCGで加工されている。一体何の為だ。画像処理が雑で時折柄本時生のメタルフレームの眼鏡が欠けてたりするぞ(笑)。

■わたくし最近の大林監督の『野のなななのか』や、『この夜の花ー長岡花火物語』の感想で、「監督の思想を登場人物の台詞に分けて喋らせて辛い」とか「反戦思想が映画表現としてこなれてない」とか批判はしてきたけど、今作も基本的には同じ。だけど熱量が前2作と比べてハンパない。

■これは、大林監督がクランクイン時に癌で余命3ヶ月と言われたことは凄く関係あるのかな。その後体に合う抗がん剤が見つかったらしく、最近は回復されて「あと30年は映画を撮る」と言われてるそうで。そこまで行ったらギネスブックの記録に載ります。

■上映館が少ないし上映時間も長いけど、心を揺さぶる映画です。可能ならばぜひ。劇中で繰り返し使われるバッハの『無伴奏チェロ』は、まさに甘美な呪詛。そこに溺れていきたいと思った。

■ああ、これで2017年分の映画の記録がやっと終わった。おまけ。この映画は2017年キネマ旬報の日本映画ベストテンの2位、なんだけど2018年の日本アカデミー賞からは漏れている。傑作なのに何で?と思ったが、日本アカデミー賞の選定基準では「2017/12/15までの公開映画」とある。今作の公開は「2017/12/16」。スタッフはプロの人ばかりなので知らないはずはない。だから分かっていてわざとシカトしたんだろうな。大林監督、カッコいいぜ。

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8年越しの花嫁 奇跡の実話 [映画]

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■2017/12/30鑑賞@109シネマズ川崎。今年111本目の邦画40本目。

■実はこの映画は当初は観る予定がなかった。苦手な難病ものだからだ。だが、この日からIMAX 3Dで公開の『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』をなる早で観たくてネット予約。気持ちの高ぶるままに家を早く出たら上映の3時間以上前だった。いくつになっても時間調整が下手な自分に愕然とする。これも何かの発達障害の部類なんだろうか。だが、監督が『64ーロクヨンー』の瀬々敬久監督で、脚本が2017年春の朝ドラで国民の涙を搾り取った『ひよっこ』の岡田惠和であれば、観ておいてもいいかな、という気も少ししたので。

■恐ろしいことに実話ベースの話なんだそう。人間は普通に生きていてもいつ何時困難に遭遇するかは分からないんだよな、と思う。岡山で自動車整備工として働く尚志(佐藤健)は、先輩の室田(浜野謙太)に無理矢理連れて行かれた合コンで麻衣(土屋太鳳)と出会う。最初は麻衣の誤解でぎくしゃくしていたが、お互いの気持を理解してから交際するようになる。

■映画の中のシーンで岡山にも路面電車があることを知る。これは路面電車マニアとしては一度行ってみねば。無駄な文章で大変申し訳ございません。

■付き合ううちに結婚を約束した二人だが、麻衣が難病にかかり精神に異常をきたし、そのまま寝たきりになってしまう。麻衣の両親、浩二(杉本哲太)と初美(薬師丸ひろ子)と、複雑な関係ながら見守り続けた尚志。ある日麻衣が意識を取り戻すが、残酷にも麻衣の記憶の中から、尚志の情報だけが抜け落ちていた。

■ネタバレはここまで。瀬戸内海(岡山や小豆島)のロケにも愛情が溢れているし、いい映画なんだろうなとは思った。ただ、身内に要介護者がいる立場では部分部分の映像描写はまあまあ辛かった。それはオレ個人に起因する話なので、作品の出来とは関係ない。

■ただ、ヒロイン役の土屋太鳳の演技は凄まじかった。病人状態の特殊メイク、そして心を乱して暴れてしまう時の身体能力の高さ。あ、そこに注目するオレっておかしいか。

■2018年の日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞したらしい。相応の結果だと思う。

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カンフー・ヨガ [映画]

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■2017/12/23鑑賞@チネチッタ。今年110本目の洋画(?)68本目。

■お正月映画にジャッキー・チェンはちょうどいい。ハラハラできて笑えて、たまには感動もある。これはジャッキーさんの親しみやすい顔も大きな要因だろう。ジャッキーさん公認で内村光良に似ているというところもあるが、観た後に人間の内面を考えさせられるシリアスな映画の記憶はない。もちろん、ジャッキーさんの出演作はとても多いので、たぶん1/4も観ていないオレが観逃している可能性は大。

■中国・西安市の博物館の大学教授・ジャック(ジャッキー・チェン)は考古学のスペシャリストで、カンフーにも長けている。ジャックの元に、インドの考古学者アスミタが訪れ、インドの財宝の在り処を示す地図を手に協力を求める。ジャックは助手たちを連れて冒険の旅に出る。

■ジャッキー様以外の俳優さんは誰も知らないので全略。アクションあり、謎解きありで面白く飽きさせない。確か何作か前で「本格アクションからの引退」宣言をしたジャッキー様は、本作もキメの場面ではアクションを披露しているものの、キツいアクションは若手に任せている。そりゃそうだ。もう還暦をとっくに過ぎてるものね。

■普通に面白いジャッキー印の安定さ。正月映画としてもいいし(だからもうとっくに正月終わってるし)暇つぶしのレンタルとしても満足できるだろう。ちなみにwikiによれば、ジャッキー様出演映画史上最高興収なんだか。もちろん貨幣価値もあるのだろうが、そういうのは何か萎える。

■インドとの合作なので、エンディングはインド映画風のダンスシーンが主体で、ジャッキー様映画でお馴染みのNGシーンはなかった。この方がいい。もうこれからも、止めたほうがいいと思います。

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勝手にふるえてろ [映画]

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■2017/12/23鑑賞@ヒューマントラストシネマ渋谷。今年109本目の邦画39本目。

『あまちゃん』以降注目してきた松岡茉優、とうとう映画初主演。と言ってもオレは浅いファンで、『あまちゃん』以前に観ていた『桐島、部活やめるってよ』『悪の教典』、そして『鈴木先生』を再度思い起こして、「あー、そう言えば出てたな」という程度。底の浅さが伺えます。それにしても、『桐島』や『悪の教典』、『鈴木先生』は学園ものなので、主役クラスは別にして、これから売れてやろうという若手俳優のるつぼだったはず。特に『鈴木先生』はヒロインの土屋太鳳を始め、矢作穂香(旧芸名:未来穂香、『花筐』)や北村匠海(『君の膵臓をたべたい』)、伊藤沙莉(『獣道』、『ひよっこ』)など、その後名前が出てきた若手俳優がてんこ盛り。よくぞその中で勝ち残ってくれたなという感慨しきり。連ドラの主演やヒロイン役はやってきたものの、映画単独主演は素晴らしいな。『ちはやふる 下の句』で魅せた「美人演技」も素晴らしかった。聞いた話だと、主人公・千早(広瀬すず)の最大のライバル役・若宮詩暢はキャスティングがなかなか決まらなかったそうだ。理由は知らないが、広瀬すずのライバル役というのは人気の面では損が多いだろう。それを敢えて引き受けた松岡茉優のプロ魂たるや。

■前置きが長すぎて申し訳ございません。閑話休題。という訳で無駄過ぎる熱量を持った50男は、初日の舞台挨拶に申し込んだらなんと当選してしまった。なので当日、ヒューマントラストシネマ渋谷に赴いた。思ったより女性客(主に女子高生)が多いのは、松岡茉優が同性に人気があるか、共演の北村匠海や渡辺大知(『まれ』に出てたね)が人気があるのかはよく分かりません。

■大九明子監督の作品は初見。原作は芥川賞作家・綿矢りさの同名小説。最近あまり本を読まないということもあるが、綿矢りささんの小説を読んだことはございません。地味な24歳のOL・ヨシカ(松岡茉優)は未だに中学時代の同級生・イチ(北村匠海)に10年間片思い中。そこに同僚の二(渡辺大知)がグイグイ迫ってくる。二がタイプではないヨシカは、どうせならイチと再度同窓会という名目で会いたいと思い、イチとの再会に漕ぎ着ける。

■まあ正直言って、ヨシカは最近流行りの「こじらせ系女子」もとい、「まあまあめんどくさい女子」のようです。なぜ「こじらせ系女子」を使わないのかは、発案した故人の作家の女性と反する意味で、とある女性ライターが自分の作品のタイトルで平然と使っていたから。

■まあそれはいいや。こういう「めんどくさい系の女子」って松岡茉優が妙にハマってて楽しい。ヨシカ目線の現実が大部分フィクションだったりするところとか。オレも内向的なので、その辺に敏感になってしまう20代くらいの時に観てればもっと共感できたかな。50過ぎると内向的とか言ってられないしね。

■舞台挨拶での松岡茉優は、ホントにパブリックイメージそのまんまの人でした。サバサバしていると言うか。この映画では違うけど、演技で色っぽい女性でも何でも出来る人。将来に期待大。3月公開予定の『ちはやふる 結び』も超楽しみ。

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スター・ウォーズ 最後のジェダイ [映画]

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■2017/12/15鑑賞@109シネマズ川崎。IMAXで観た。これには若干不満があるのだが後述。今年108本目の洋画67本目。しかし、これを書いているのはそれから一ヶ月以上経っている。遅筆にも程がある。なおその後、2017/12/29に同じ109シネマズ川崎でIMAX3Dで再見。海外では当初からIMAX3Dでの上映があったらしいが、日本ではなぜか2週間遅れ。大人の事情ってやつかしら。『アバター』以降、3Dが再度普及し始めの時期には。実際に3D用に多角的にカメラを配置した撮影が主流だったが、映像技術の発展により、2Dと同じ撮影方式でポスト・プロダクション(大まかに言えば撮影後の編集作業)で処理するのが現時点での主流。今作もそう。その是非については何とも言えないが、観客としては違和感はない。

■さてさて。『フォースの覚醒』の感想は観てすぐブログに書いたが、今回は公開後1ヶ月以上経っているので、賛否両論出尽くしている感が強い。そして多少はネタバレをしても大丈夫っぽいのでその辺は掘ってみようかと思う。まあ、遅筆の言い訳ですけどね、ふん。

■前作『フォースの覚醒』で、ファースト・オーダーのスターキラー基地の破壊に成功したものの、追及の手を緩めないファースト・オーダーに対して、逃亡するしかないレイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)率いるレジスタンス。一方、フォースが覚醒したらしいレイ(デイジー・リドリー)は、「最後のジェダイ」たるルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の教えを乞うべく、ルークが隠棲する惑星オク=トーにファルコン号でたどり着き、ルークと対面する。しかしルークは非協力的で、レジスタンスへの協力と、レイをジェダイとして育てることを拒否する。そこには盟友ハン・ソロ(ハリソン・フォード)の息子、カイロ・レンことベン・ソロ(アダム・ドライバー)をジェダイとしてきちんと育成できなかった悔悟があった。

■レジスタンスを徹底的に追い詰めるファースト・オーダー。レイア将軍の意図を読み取れないエースパイロット、ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)は敵の殲滅を目的としすぎるあまり、味方に大量の犠牲を出し降格されてしまう。

■ネタバレはこの程度にするが、興収は順調なものの賛否両論はネットでも飛び交っている。もうネタバレを気にしなくていいけど、レイはフォースを受け継ぐ種族ではなく、単に親に棄てられただけだとか、ポー・ダメロンが馬鹿すぎるとか、ハイパードライブが適当すぎて話の興味を削いでるとかなどなど。

■ちょっと待って欲しい。エピソード7の監督は、オレ基準(1963年生まれ)で言うと同世代のJ・J・エイブラムス監督(1966年生まれ)なんだけど、今作のライアン・ジョンソン監督は1973年生まれという、明らかにオレより一世代後の監督なのだ。ルーカスと比較したら二世代か。

■確かに脚本的には突っ込みどころが多い映画なんだけど、わたくしメチャクチャ興奮しました。「三部作の二作目は傑作が多い」の理論に沿ってるし。そして2019年公開予定のエピソード9は、またJ・J・エイブラムス監督がメガホンを取る。ま、予定されていた監督が降板したかららしいけど。レイがフォースに関係ない庶民の出身だったのもフェイクかも知れないし。

■そして、新三部作は一作目はハン・ソロ、二作目はルーク・スカイウォーカー、そして完結編はレイアの物語の予定だったというのが製作側から明かされている。そしてレイアのデジタル・アーカイブは一切使用しない予定だとも。どうまとめるのだろう。

■これは期待して待つしかないではないか。

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ビジランテ [映画]

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■2017/12/10鑑賞@テアトル新宿。今年107本目の邦画41本目。

■本作の入江悠監督は『SR サイタマノラッパー』シリーズ3部作で世に出た人であるが、勢い込んで東京に出てきたものの結局金策に困り実家に戻ったこともあったらしい、という苦労人の監督。しかし近年は『ジョーカー・ゲーム』や2017年公開の『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』が大ヒット。一躍人気監督の仲間入りを果たした。だが入江監督の中では『SR サイタマノラッパー』のような独自企画の作品が作りたいという気持ちが強く、2017年初には、テレ東でドラマとして『SR サイタマノラッパー マイクの細道』を手掛けている。『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』の公開時に、「次回作で出資が集まらずクラウドファンディングを考えている」というニュースを読んだが、今作公開後の篠田麻里子のインタビューで「2017年の初仕事がこの映画の撮影でした」というコメントがあったので、とっくに解決したかまたは別の作品の話だったようだ。

■舞台は埼玉県の地方都市。実際は入江監督の出身地の深谷市のようだが、仮名が使われている。地元の有力者で市議会議員・神藤武雄(菅田俊)は家族に対しても絶対的な強権者だった。反発を覚えた長男一郎(大森南朋)は父親を刺しそのまま出奔する。同じく反感を抱いていた二郎(鈴木浩介)、三郎(桐谷健太)はそのまま武雄のもとに残る。

■数十年後、武雄が亡くなる。二郎は父の跡を継ぎ市会議員になり、美貌の妻・美希(篠田麻里子)との間に男の子を設けている。三郎はデリヘルの雇われ店長。父の遺産も相続する気もなく、二郎に任せようとしている。そこに突然、行方不明だった一郎が現れ、自らの相続権を主張するが、その土地には市議会の重鎮で利権を狙う岸(嶋田久作)が確保しようとした土地が含まれていた。また、三郎の経営しているデリヘルの上部組織のヤクザたちもその土地を狙っていた。

■すんげえ泥臭い話。もちろん都会だろうが地方だろうがヤクザの方は全国満遍なくいらっしゃるというのは知ってはいるが、東京とこれだけ近い埼玉でもこういう話があるのは、四国の田舎者としては違和感がある。もちろんオレがズレてるだけなんだけどね。

■でも凄い。全体に渡る熱量がもの凄い。「熱量が凄い」と言うと技術はイマイチなのかととらえる向きも残念ながらあるけど、安定した技術があってこそ熱量は伝わるのだ。脚本も入江監督なのだが、敢えて筋を明快にしないで(なぜ一郎が戻ってきたかとか)話の流れを最大に活かす意図があったのかと思う。

■役者陣も凄いなあ。大森南朋の怪演も凄いし、ピタッとハマる鈴木浩介も。クレジット上ではトリプル主演なんだけど、実質の主演は桐谷健太ではないかと。とにかく圧倒的な熱量に参った映画でした。少なくともオレが生きている間には、地方と都市の格差はずっと重要なテーマなので、入江監督にはこのテーマでもずっと撮り続けてほしい。

■おまけ。「篠田麻里子の濡れ場がある」というのがこの映画の鑑賞目的のひとつでした。前半でさくっと出て、全然大したことありませんでした。スケベで大変申し訳ございません。

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DESTINY 鎌倉ものがたり [映画]

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■2017/12/9鑑賞@チネチッタ。今年106本目の邦画40本目。

■原作・西岸良平☓脚本&監督・山崎貴と、大ヒット作『Always 三丁目の夕日』シリーズの(リンクは他にログがないので3作目のもの)タッグ再び、という布陣だが、共同脚本の古沢良太は今回入っていない。そこに若干の不安は感じるが。まあ西岸良平の原作だと酷いものにはならないだろうと思い観ることにした。そう、山崎貴監督は一般的にはヒットメーカーと思われているが(実績には問題なし)、オレにとっては当たりハズレが結構ある監督さんなのだ。

■前述の通り西岸良平の漫画『鎌倉ものがたり』が原作。未読。古都・鎌倉に暮らす売れないミステリ作家・一色正和(堺雅人)のもとに、正和の原稿取りのバイトをしていた、年が離れた娘・亜希子(高畑充希)が嫁いでくる。亜希子は鎌倉の街中に普通に妖怪がいることに驚くが、正和や出版社で正和の担当・本田(堤真一)、ばあやのキン(中村玉緒)、そして正和に妖怪絡みの事件のアドバイザーを依頼している鎌倉書の署長・大仏(國村隼)やその部下の心霊捜査課の稲荷(要潤)などは気にする素振りもない。やがて亜希子も、一色家に住み着く貧乏神(田中泯)と仲良くなったりして環境に馴染んでいく。

■まさか子供がこの映画を観て、「鎌倉には本当に妖怪がいる」とか思ったりはしないよな。ある日身近で変な現象が起きることに気づいた正和は、行きつけの居酒屋の女将(薬師丸ひろ子)から貰った厄除け札を玄関に貼るが、亜希子は家に入れなくなってしまう。亜希子はいつの間にか死に、幽体になっていたのだった。正和に迷惑を掛けたくない亜希子は、死神(安藤サクラ)の指示通り江ノ電から黄泉の国に旅立つ。納得できない正和は、生きたまま江ノ電に乗り込み、黄泉の国に向かい亜希子を取り戻そうとするが。

■お正月映画らしい、と言っていいのか悪いのか。ここでは書ききれないくらい俳優陣が豪華絢爛だし、実写の鎌倉や、黄泉の国のきらびやかな映像とか、観ていて楽しい。まあ鎌倉が舞台の映画・ドラマって基本的に大ハズレがない(『海街diary』とか)のでズルい気もするけど楽しい映画。特に若奥さんの高畑充希も可憐さと言ったら。オレぐらいのオッサンは「あんな可愛い嫁がいたら」と妄想の渦に叩き込まれそう。オレだけじゃないよね?

■江ノ電が活躍するところもあり、鉄道マニアも大喜びで万人にお薦めの映画。気楽に笑ったりハラハラしたり泣いたり、という気分の時にちょうどいいですよ。山崎貴監督作の中ではアタリです。こちらは絶賛上映中。


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パーティで女の子に話しかけるには [映画]

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■2017/12/9鑑賞@チネチッタ。今年105本目の洋画66本目。

■いかにもボーイ・ミーツ・ガールのような甘酸っぱいタイトル。これは半分映画の内容を示しているようで半分はそうでもない。なお、邦題は原題の直訳に近い。日本語で変にこねくり回した別の邦題がついていたなら、オレはたぶん発狂していただろう。

■1977年のロンドン郊外。パンク好きだが冴えない少年エン(アレックス・シャープ)は仲間二人と、出会いを求めてパンク関係のパーティに潜り込む。しかしどうも様子がおかしい。そこでエンはザジ(エル・ファニング)という少女と出会い、パンクやファンションの話で仲良くなる。しかし実は。そこはパンク・パーティではなくて宇宙人の集会だった。ザジも同じ宇宙人で、48時間以内にここから去らなければならない。出会ったばかりの二人の冒険が始まる。

■簡単に言うとSFだけど、色々奇妙な上に、主人公が77年のロンドンの少年ということは観客のオレとほぼ同世代。ピストルズやラモーンズが大音量で流れていた時代。あ、四国の田舎ではそんなに音量は大きくなかったけど。エル・ファニングがポスターで着ているツイードのジャケットなんて涙を禁じ得ない。

■そう、この映画で初めてオレはエル・ファニングの魅力に覚醒したのだ。『ネオン・デーモン』『20センチュリー・ウーマン』と観て、「この女優さんのどこがいいんだろう?」という疑いを持ったままだったけど、この映画での「ザジ」という役はエル・ファニングにしかできない。素晴らしい。そして甘酸っぱい結末も含めて、とてもチャーミングな映画。

■もともとの上映館が多くないこともあり、東京での上映は少なくなってきたけど、地方ではこの映画もこれからが本格公開。可能な人はぜひ観てください。ただし、趣味に合わなかったとしても補償はいたしかねます(笑)。

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オリエント急行殺人事件 [映画]

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■2017/12/9鑑賞@チネチッタ。今年104本目の洋画65本目。

■『オリエント急行殺人事件』アガサ・クリスティ作の不朽の名作小説で、これまでもさんざん映像化されてきた。直球ではないものの、2015年の新春特番で、三谷幸喜の翻案で舞台を日本にしてドラマとして放送された。とても面白かった。それは別にして、かなり沢山の人が結末を知っている内容でどこまで攻め込めるのか、というところに興味はありました。たぶん謎解きに重点を置かないのでは、と。

■ケネス・ブラナー監督・主演。世界でもっとも結末を知られているミステリーのひとつ、なのであらすじにはあまり触れないが軽く。エルサレムでの難事件を解決した名探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)。イスタンブールで休暇を楽しもうとした矢先、急遽ロンドンでの事件の解決を依頼され、オリエント急行の席を手配してもらい乗り込む。

■食堂車にいるポアロの元に、アメリカ人の富豪・ラチェット(ジョニー・デップ)が現れ、脅迫を受けているため身辺警護を依頼される。気が進まないポアロは断るが、深夜、列車は雪崩のために脱線し停車。その際、ラチェットが刺殺体で発見される。外部からの侵入者はないと断定したポアロは、乗客全員を容疑者として捜査を開始する。

■まあとにかくキャストがそれ以外も豪華。ペネロペ・クルス/ウィレム・デフォー/ジュディ・デンチ/ジョシュ・ギャッド/デレク・ジャコビ/スリー・オドム・Jr/ミシェル・ファイファー/デイジー・リドリーと、凡百の映画ならキャストのギャラだけで4〜5本はできそうな感じ。でも無駄遣いというわけではなく、適宜それぞれの俳優が要所要所で輝きを放っている。鉄橋の上での停車というのも鉄オタ心をくすぐるし、なにより舞台が寝台列車というのが、通常の寝台列車の運行が一日たった一往復になってしまった日本からすると、とてもとても羨ましい。

■もちろん鉄道マニアでなくても十分に楽しめます。ところで『スター・ウォーズ フォースの覚醒』で現れた新星のうち、アダム・ドライバーはこの2年でびっくりするくらい売れっ子になり数本の映画に出ているが、ヒロインのデイジー・リドリーはあまり見かけなかった。が、今作ではちゃんと存在感をもっている。おそらくアダム・ドライバーとは若干タイムラグがあった程度で、彼女もこれから売れていくんだろうなと。

■原作の性格上、謎解きの面白さは少ないですが、十分な娯楽作です。

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