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青が散る [小説]

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■若い人は知らないかもだが、宮本輝の著名な青春小説。彼の作品の中でもかなり長く版を重ねている。逆に古くからの宮本ファンの人には(そんな人でこの小説を読んでない人はあまりいないと思うけど)、「え、爽やかなの?」って反応はあるかも。ご安心を、爽やか兼ドロドロですから。

■読んだことのない人の為にネタバレしない程度のあらすじを書くが、主人公:椎名遼平が、新設の関西の私立大に入り、図らずもテニスに打ち込むはめになり、かつ同期生のヒロイン:佐野夏子に片恋をする、という話。まあ大雑把にいうとそんだけ。

■でもこの小説が凄いのは、主人公とヒロインだけでなく、主要な登場人物の大部分の願いが叶わないところ。みんな大小の挫折を経験する。例外を言えば「ガリバー」だけか。でも椎名遼平は黙々とラケットを振り続けるし、みんな前に進もうと努力する。その点では青春小説でありながらストイックでもある。

■手元にこの小説は勿論のこと、TVドラマのシナリオ集がある。昔脚本の勉強をしていた時期があってその一環として買った。脚本の山元清多さんのあとがきがあり、それによると、放送時の視聴率は振るわず当初の予定より早く打ち切りになったのだが、視聴者の印象は強く(ヤマトやガンダムみたい)、後年実際TBS(ドラマの放送局)にも、このドラマを見てドラマを制作したいと入ってきたスタッフが少なからずいたらしい。あとドラマ版の主題歌は松田聖子「蒼いフォトグラフ」。作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂(松任谷由実)。この歌のフレーズの「みんな重い見えない荷物 肩の上に抱えてたわ それでも何故か明るい 顔して歩いてたっけ」っていうのはこの小説の核心を突き当てている。改めて松本隆を天才だと思った。やや脱線。

■それだけの物語力があるのでお勧めの本。再ドラマ化を期待している向きもあるようだが、これは宝くじを買うくらいのつもりで待つほうがいいかも。でもその宝くじ、私も買うかもね。

■最後に、この小説で一番感じた台詞。主人公の遼平が、駆け落ちめいたことをして姿を消した夏子の母に呼ばれ、夏子を探して欲しいと頼まれた時に言った(若干ネタバレ申し訳ない)「僕があんまり可哀相ですよ」。男はそう思っていてもなかなか口に出しては言えない。宮本輝は凄い、と思った。

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