宇宙兄弟

■5/11、レイトショー＠109シネマズ川崎で鑑賞。今年15本目の邦画8本目。原作は「モーニング」連載中の小山宙哉の同名漫画。

■もともと観るつもりはなかったのだけど、映画館でやたらに予告編を見るたびに、ロケットの打ち上げシーンが上部からの俯瞰で猛烈に迫力があったので（勿論実写でそんなアングルで撮れるはずはないのでVFXだ）それを見たかったのと、まああとは話のタネ程度になりゃいいや、程度の動機だったのだ。どうせ小栗旬と岡田将生のイケメン二人が売りのチャラい映画だろうと。カンペキにナメていたのである。

■しかし期待は裏切られた。もちろんすごくいい意味で。ホントナメててすいません。昨年末から年初に至って映画会社3社で競作された「はやぶさ」なんかたぶんメじゃないと思う。ああ、でも「はやぶさ」関連の映画まったく観てないんですごめんなさい。

■テーマ。原作のテーマにも共通するのだが、やはり見知らぬ宇宙に対する憧れとかドキドキ感とかは、特に我々アラフィフ男世代にはどストライクなのだ。なんせ幼稚園や小学生のころにアポロ11号が月面着陸してたんだから。当時の子供たちの夢は、わたくしも含めて宇宙飛行士が断然だったんだしね。勿論わたくしの場合は知力体力精神力ともに当然足元にも及ばないというのは言わんでもよろしい。ただその時のスピード感から考えると、40数年後の現在には火星はおろか当然その先まで行ってるとみなさん思ってたでしょ？　ところが現状は人類、月だってもう数十年踏んでない。そりゃ米ソ冷戦の終結とか、スペールシャトル事故とかのいろんな要素があった上でのことだけど。
でもやはり、NASAやJAXA、訓練施設やロケット打ち上げ施設への憧れは残っているので、こういう映画でリアル現場を垣間見られるのは何より嬉しい。

■そして、キャスティング。主役の二人、特に小栗旬がいい。最初にオファーが来た時は、てっきり主役のムッタではなく弟のヒビト（岡田将生の役）だと思ったそうだ。そしたらムッタ役は林家ペーか（笑）。それはともかく、結構天パーのムッタの役がハマってるんです。岡田将生も、若くて天然なヒビト役が似合っている。しかし、それよりいいのは女医のせりかさん役の麻生久美子だ！　イイなあやはり。そして麻生久美子と同じ「モテキ」班の新井浩文のヒネくれた感がまたいいんだよな。ここんとこ引っ張りだこの俳優。そしてトリはおなじみ堤真一。言うことなし。

■先にも書いたけどこれは漫画原作の映画だ。漫画原作の映画ってかなり沢山ある。ちょっと思いつくだけでも、「のだめカンタービレ」「モテキ」「ヒミズ」「テルマエ・ロマエ」などなど。でなかなか本数が多い割には成功作というのはそうそう多くない。この例で言うと、成功したのは漫画の表現技術を全く新しい映像のダイナミズムに置き換え、作品の広がりを見せた「モテキ」とか、一旦原作を噛み砕いて別の再生の物語に作り変えることができた「ヒミズ」くらいで、「のだめ」「テルマエ」に関してはちょっと残念という感じ。

■原作がベタな感じで、大森美香さんの脚本もベタなこの映画も、ともすると残念な感じになりそうだった。だが違うのだ。これは森義隆監督の手腕によるところが大だと思う。ともかくベタベタなストーリーで役者さんの力が入ってお涙頂戴モードになりそうな映画なのだが（堤真一を始めとしてそういう演技が容易にできる役者さんも揃ってる）、すごくいい意味で役者さんたちの演技がクールなのだ。2025年の近未来というホラ話を、リアルに感じられるように綿密に演出されている映画という印象。わたくしこういう出だしが大ボラで、それをリアリティあふれる演出で作っていく映画が基本的に好き。森監督の淡々とした演出は、ドキュメンタリー畑出身ということもあるのかもしれない。いや、他の作品見たことないんですけどね。

■そういう訳で食わず嫌いの人には特にお勧めする娯楽映画です。ホントに。

■オマケで少々の難点書いちゃうけど、月面のシーンがリアリティなさすぎ。NASAのモノクロ資料映像くらいしか残ってないし、肉眼で月面見た人って今地球上に何人いるかって話なので、仕方ないですが。
あともう一つ。ヒビトのロケットの打ち上げ時に、ムッタによく見える席を提供したもと宇宙飛行士「バズ・オルドリン」がなんと本人役で出演。断言してもいいけど、わたくし世代の日本人は、アポロ11号の乗組員っていうと「アームストロング船長」（関係ないけど同名の筆箱もあったか？）以外に記憶がある人はそうそういまい。まあつまり実在の人なのだ。が舞台設定は2026年、オルドリン氏は1930年生まれだから映画の中では96歳・・・ま、これはご愛嬌。