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野のなななのか [映画]

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『この空の花ー長岡花火物語』と同日、8/23鑑賞@目黒シネマ。今年41本目の邦画22本目。二本立てで5時間半超えと前のエントリで書いたけど、この映画単独でもなんと2時間51分。長いよ。しかもこちらが二本目だったので、いろんな意味で意識が遠くに行きそうになった。

■タイトル、特に「なななのか」は何のことだか分かりづらいけど、「七・七日」、つまり一般的には四十九日を指す言葉です。原作は長谷川孝治さんという方で、弘前で劇団を主宰されてる方らしい。ちょっと気になったので調べてみたのだが、特に原作が単行本として出版された経緯もないようだし、長谷川さん自身は『この空の花』の脚本を大林監督と共同で書かれた方でもあるようなので、実質はストーリーを大林監督と共同制作した、というのが近いところだろう。

■セミドキュメンタリーだった『この空の花』とは異なり、ストーリー自体は完全なフィクションで劇映画の体をなしている。舞台は北海道芦別市で、かつて医師だった92歳の鈴木光男(品川徹)が3月11日に亡くなるところから話は始まる。タイムフレームとしてはそこから四十九日までの話。

■この映画も『この空の花』と同じく「ご当地映画」で、芦別市と芦別市の有志の出資を受けている。その辺について大林監督はトークショーで話していたけど、ここ十数年の自治体が行う「街おこし」は実際は「街壊し」なのだと。だから自分は「街守り」の映画を作っていると。これには強く同意。何回かブログに書いたけど、地方都市に行くと画一的なロードサイドのチェーン店とコンビニ。うちの故郷だってそうだ。行政はどこに金を使ってるかというと無駄に豪華で、どれだけ使われるかが不明な立派なハコモノ(稚内駅とかひどいぜ)ばっかりで、どの地方に行っても結構絶望する。

■映画のあらすじに戻る。息子・娘がみんな亡くなっている光男の臨終間際には、妹、孫たち、ひ孫が集まる。そこに見知らぬ女、清水信子(常盤貴子)が現れるが、彼女は以前、光男のもとで看護師をしていた女性だった。

■以降、大林監督の目論見通り話はあちこちにとっ散らかるので、これ以降のあらすじを書くのは難しいしあまり意味がない。少しだけ書くと、話は戦時中の樺太(今のサハリン)で当時光男が想いを寄せていた女性・綾野(安達祐実)との悲劇、そして311後の現在の日本で起きている話が輻輳していく。

■芦別市は通過したことはあるけど、訪れたことはない。しかし冬から初夏の風景まで含めて素晴らしい。もともと北海道が舞台の映画だと評価は2割増しになってしまうオレではあるが。キャストも品川徹、常盤貴子、左時枝、松重豊、寺島咲(大林監督の秘蔵っ子らしい)などなど好演技。安達祐実が意外と言ったら失礼だけど良かった。あと出番が結構多かったのが山崎紘菜。この女優さんはあまり知名度はないと思うが、TOHOシネマズによく行く人なら分かる。予告編トレーラーを担当している東宝シンデレラの人。

■大林監督の演出はかなり好き勝手。生者と死者が入り混じる映像になってるし。トークショーでの監督曰く、自分は2回死んでいると。一回目は敗戦の時。これは経験していないオレとかには分からない感情。二回目は70歳の時に心筋梗塞で死にかけたそうだ。もともと死者をよく映像に登場させていたけど、二回目の死以降は、生者と死者の区別なんてもうどうでもいい、という心境になったそうだ。死んだはずの品川徹の独白が延々続くし、さあ大変である。

■ファンタジーかつミステリーなので、ネタバレは極力抑えたつもりだけど、そういう大林ワールドが好きな方は結構気に入るかもしれない。

■ここまでは褒めたつもりです。しかし。この映画のテーマは明らかに前作同様、反戦・311の惨禍・反核・反原発です。オレももちろん基本的には同意です。が、以前『少年H』の感想でも書いたように、プロパガンダ映画自体は全然問題ないけど、その前提条件として、ちゃんと(広義の)エンタテインメントとして成立してることがマストです。大林監督の意見を複数の登場人物に分散してセリフとして喋らせるのは、なんだか映像表現の敗北という気がします。そもそも311と反戦を一緒くたにして語るのはなんか違う気がする。この映画を観て反戦・反核・反原発の意思決定をする人はあまり多くないと思う。

■これは大林監督のプロダクションのいわゆるインディーズ映画であって、メジャー配給網は通ってない。なのでPは奥様。大手配給会社でPがついた場合、こんな題材や長時間の映画の企画は通る訳はない。大林監督は今後も好き勝手にやりたいから、次作以降もメジャー配給網ってことはないんだろうな。そこには侠気を感じる。

■正直言ってお勧めはできません。が、長編二本立てという過酷な状況で観たということもあり、あと上映時間が長すぎるという点を除いて映像自体は気に入っているので、DVDが出たらレンタルで、家で煎餅でもかじりながら見直してみたい気もする。

■大林監督のトークショーまとめ。今まで書いたエピソードなど、面白い裏話をたくさんされていた。話し好きのおじいちゃん(失礼だけど、うちの親父と言ってもおかしくない年齢なので)という感じ。ただ、水爆実験の話とか、ポツダム宣言受諾後もソ連が北海道に侵攻していた話とか、確かに教科書には詳しい説明はなかったけど、そんなのオレたちの世代は自分で本とか読んで知ってたと思うので、それを強調するのはちょっとな、と。あ、でも確かに今の20代とかは知らないか。
そうは言うものの、監督のトークショーは楽しかった。伝説の人の話を生で聞けたし。しかしトークショーが1時間半を経過したあたりで終電がヤバくなり退席した。ウチ、23区内だしそれほど遠い訳ではないのですが。あとで知ったところ結局2時間半だったそう。驚愕の3本立て。

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