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バクマン。 [映画]

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■2015/10/3鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年67本目の邦画34本目。今回もともと冗長だった上に、追記でさらに長くなってしまった。ご容赦ください。

■今作の大根仁監督の作品は崇拝してると言ってもいいくらい好き。映画『モテキ』『恋の渦』ドラマ『モテキ』『湯けむりスナイパー』『まほろ駅前番外地』『リバースエッジ 大川端探偵社』などなど。特に『モテキ』と『恋の渦』にはヤラれた。その監督の新作は当然観るよな。

■原作は『デスノート』と同じ大場つぐみ☓小畑健の同名漫画。『デスノート』も映画やドラマになっていて売れているのに、このご両人の関わった漫画は未読です。掲載誌「少年ジャンプ」を『SLAM DUNK』の終了後卒業して以来20年以上読んでないので。まあ50男が毎週購読してたらそれはそれでおかしいか。

■大雑把に言うとキャスティングは、大根仁meets『るろうに剣心』&大人計画、という感じです。高校生のサイコー(佐藤健)は高度な画力を持ちながら、以前漫画家の叔父・川口たろう(宮藤官九郎)がジャンプで連載打ち切りの果て過労で亡くなったこともあり、無為な日々を過ごしていた。しかし同級生のシュージン(神木隆之介)にその画力を見抜かれ、作劇能力はあるが作画力がゼロのシュージンと組んで漫画家になろうと持ちかけられる。最初は拒否していたサイコーだが、秘かに想いを寄せていて声優を目指している同級生・亜豆美保(小松菜奈)と「作品がヒットしてアニメ化されて亜豆が声を担当したら結婚する」という約束を交わし猪突猛進する。少年ジャンプに持ち込みをして、担当編集者の服部(山田孝之)の支援のもと、「手塚賞」に準入選するが、彼らの前には前の「手塚賞」に入選した天才・新妻エイジ(染谷将太)が立ちはだかった。

■本当にキャスティングはいい。大根監督が一番気を使ったのは「佐藤健をいかに童貞っぽく見せるか」だったらしいが(笑)、確かに26歳の健くんに高校生役はキツくはあるけど、童顔だし大柄ではないのでさほどでも。相方の神木隆之介もいいし、『るろうに剣心』で高速チャンバラをやりあったとは思えないくらいの相性。そして山田孝之が珍しく魔性のない普通の編集者の役をやってるし、ライバル役の桐谷健太、大根組では毎度おなじみ新井浩文や、皆川猿時がきっちり抑えてる。役者としてのクドカンもいい。そして最強のライバル染谷将太がすごくハマり過ぎ。もう、オレの好きな役者さんばっかり。

■それに舞台は最大の漫画雑誌「少年ジャンプ」なので、男性で馴染みのない観客はあまりいないのでは。子供の頃にジャンプを読んでなかった男子を探すのは、なかなか難しいだろう。原作と作画の役割分担の「ネーム」とかも丁寧に説明されてるし。まあそもそも大根監督は「ネーム」を元に映画を一本撮った人だから。ご存知『モテキ』である。ドラマ版は久保ミツロウさんの原作漫画があったんだけど、映画版の原作は完成漫画ではなく「ネーム」だけだったそうだ。

■という流れでベタ褒めと行きたいところだけど、残念ながらそうではない。漫画の制作過程というのは、素人でも想像がつくぐらい地味なので、エンタとして成立させるのは結構難しいのではという予想はあったけど、大根監督は映像表現という意味では軽々とクリアしている。おそらく実写映画では初めて使われたのではないかというプロジェクションマッピングと、ライバルとの凌ぎ合いを実際のバトルに見立てる手法。『モテキ』でのカラオケ映像の流用手法とか、大根監督の映像アイディアの豊富さには唸らさせられる。『モテキ』同様エンドロールも凄まじかった。

■この項は思い切り余談。大根監督は90年代前半はカラオケビデオのディレクターを生業にしていたそうだが、当時のオレは(会社の仕事で)週の半分以上は赤坂のスタジオに詰めて、レーザーディスク用のカラオケビデオの完パケ画像チェックをするという、まことに生産性のない仕事で鬱々としていた。なので、大根監督作も何本か見たことがあるかも知れない。もちろん映画やドラマと違いクレジットなんてないので、確認しようはなかった訳だけど。

■閑話休題。大根監督の映像アイディアが素晴らしすぎる分、逆にストーリー展開がどうしてももっさりと感じてしまう部分が目立ってしまうのだ。『モテキ』でも、後半の幸世(森山未來)とみゆき(長澤まさみ)の恋愛の展開部分にも同様のことを感じた。クドカンの脚本なんかにも共通するところだと思うけど、瞬発力のある映像作家の人は、尺の短いドラマとかでは問題ないけど、映画の場合はどうしても瞬発力と持続力の兼ね合いが問題になるのではないだろうか。上から目線で本当にすいませんすいません。あと、原作を読んでないので分からないが、結末はどうも原作とだいぶ変わってるらしい。ネタバレはしませんが、オレ的にはやや不完全燃焼な結末でした。

■という訳で現時点では強力にお勧めする映画とは言えないけど、まだ1回しか観てないので次観たらもっと消化できるかも知れない。最低でもあと1回は観ます。その分、印象が変わったら追記もしくは編集します。

■2015/10/7追記。10/6のレイトショーで2回目。ついでにパンフも買った。映画への感想は基本的には変わらない。大根監督の漫画業界への愛情が強烈過ぎて、結果、映画として消化不良になったということは再度確認した。また、一度目を観た時にぼんやりと思っていたのだけれど、この映画の終わり方は映画『キッズ・リターン』を強く意識したものだということもパンフで確認した。パンフで確認、っていうのはどうかとも思うけど。

■特に『SLAM DUNK』の引用が結構ある。サイコーとシュージンのハイタッチは、最終回の花道と流川のアレだし、「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」の安藤先生の名台詞とかね。

■一回目で書き切れなかった他の俳優の感想について若干。ジャンプの編集長役がリリー・フランキーなんだけど、この人も大根組の常連。本来イラストレーターだったのに、気がついたら日本アカデミー賞最優秀助演男優賞まで獲ってるし。いったいこの人はいつどこで芝居を勉強したのかと思うほど、出始めの頃から芝居が上手い。今作でも同様。

■ヒロインの小松菜奈。この人は正直、あまり表情が豊富な人ではない。最初に彼女の出ていた映画『渇き。』を観た時に、映画の内容もあってか、怖さすら感じる人だった。が、最近WOWOWで彼女がヒロインの映画『近キョリ恋愛』を見た。山Pが主演で、正直映画自体は大したことない。小松菜奈の表情の乏しさは同じなのだが、それが一転して大きな魅力に転じていた。今作でもその路線。この人の将来性も楽しみです。

■そして変な話だけどパンフの完成度。大根監督は映画本編に加え、DVD/BDのパッケージやパンフの内容まで含めてひとつの映画と考えているという話をどこかで読んだことがある。『モテキ』BD版のリーフレットだったかな。今作のパンフも、映画本編を観た人にとってはかなりいい出来ではないか。どの作品とは言わないけど、同様に金を取っていても残念な出来のパンフも結構あるので、ケチと言われようがパンフ購入作品は絞っているわたくしです。

■話のエピソードとしては原作の半分程度しか消化してないらしいので、続編も作ろうと思えばつくれるだろうけど、続編の制作にはあまり賛成しません。今回の映像のアイディアを上回るものが短期間に出てくるものとも思えないし。『キッズ・リターン』よろしく「まだ、始まってもいねえよ」で止めといたほうがいいと思う。まあ『キッズ・リターン』は違う監督とキャストで、最近続編が作られたらしいけど(汗)。

■追記しても全面的にほめてないし煮え切らないオレですが、この映画はぜひ多くの人に観られるべきだ。特に少年漫画世代の男子(ほとんどか:笑)。それでSNSとかでどうのこうのと激論を戦わせられてナンボの映画だと思います。まあ一般観客が心配するまでもなく、公開週の興収は1位だそうですけどね。


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