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何者 [映画]

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■2016/10/16鑑賞@チネチッタ。今年109本目の邦画53本目。

■朝井リョウの直木賞受賞作の同名小説が原作。朝井リョウの作品の映画化は、大傑作『桐島、部活やめるってよ』に続き二作目。映画は大傑作だったのだけど、実はオレはそれほど熱心な朝井リョウファンというわけでもなく、読んだ小説は『桐島』とこの原作小説の二作だけ。『桐島』の主なテーマはスクールカーストで、『何者』は就活。ただ二作に共通しているのは、若者たちの過剰なまでの自意識。そういえば就活映画と言えば、金子修介監督・織田裕二主演の『就職戦線異状なし』という映画もあったっけ。

■拓人(佐藤健)は都内の私大生。元演劇サークルで、元バンドサークルの同級生・光太郎(菅田将暉)とルームシェアをしている。語学留学から帰国した光太郎の元カノで片思いをしていた・瑞月(有村架純)と再会し、瑞月の知り合いの理香(二階堂ふみ)と同棲中の彼・隆良(岡田将生)が同じマンションの真上の部屋ということもあり、就活のために理香の部屋で定期的に集まるようになる。それに拓人に定期的にアドバイスをくれる演劇サークルの先輩の理系院生・サワ先輩(山田孝之)を含めての話。

■現在の邦画界での若手オールスターと言ってもいいくらいのキャストなので、就活をテーマにしたラブストーリーにも思えるけど、朝井リョウの原作で、脚本・監督が、問題作『愛の渦』の監督でもあり、劇団ポツドール主宰の三浦大輔なのだ。そんな話になる訳がない。なお、三浦大輔はハマの番長ではありません。ま、元祖番長は今年現役を引退したので、今後は余計な注釈は必要ないとは思うけど。小説もエグいが映画はそれに輪をかけてエグい。

■オレの時代の就活は30年以上前だったので、ひたすら履歴書を書いて送って会社説明会、時折OB訪問したりとかなので、当時はインターネットの萌芽のようなものは存在していたけど、商業ベースでの利用はほぼゼロでした。その後の転職活動では多少使ったけど、エントリーシートとかWEBテストとかにはあまり馴染みがない。おまけにここ数年で増殖してきたSNSの存在もあるし。だからオレらの世代とかよりも、今現在の就活世代の人たちのほうがハマるのではないかとも思うけど。

■でも、この映画(小説)の主なテーマである「自意識との戦い」というのは割合普遍的な話なのでそこはズッポリきた。そして三浦大輔監督の演出には容赦がなく、キャスティングの段階から考えていたとは思うんだけど、登場する俳優が持ち合わせそうなネガティブなパブリックイメージを強烈に掘り下げている演出がいやらしい。佐藤健の「内向的で利己的」なとことか、二階堂ふみの「意識高い系」とか、有村架純の「鈍重さ」とかね。あくまで本人がどうかではなくて、そういうイメージにすごく当てはまりそう、という意味で。そして劇団主宰の三浦監督らしく、かなり舞台に寄せていった演出方法とかも見どころ。

■特に主役の拓人の、「批評家的に人の活動を見下して自分の中”だけ”での精神的優位を保つ」というスタンスは、エグいけど誰でも大なり小なり自分に降りかかるところはあるんじゃないだろうか。オレにもね。

■原作小説がすでに4年前なのだけど、twitterのシステムを効果的に小説・映画に使った手法もちょっと唸ってしまう。SNSのサービスは常に古びていくという宿命を背負っているのだけど、敢えてそれを選択した小説・映画の作り手の勇気も褒めておきたいな。観てスッキリする映画でも何でもないけど、気になる人には観て欲しい映画。

■ところで原作の朝井リョウは、早稲田在学中に『桐島』ですばる文学賞を取り、しかも就職先は東宝という就活超勝ち組。もう退職したらしいけど。そして今作の企画は、同じく東宝在籍で小説家もやっている川村元気というのもなんかの皮肉か。東宝在籍作家の大先輩と言えば、石原慎太郎もそうらしいけど。

■「企画」の業務範囲がどこまで及ぶのかは知らないけど、川村さん、後輩原作映画のヒットを願うならTVCMにIKKOを使うべきじゃなかったね。台無し。まあ映画はヒットしているようだけど。

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